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更新日:2012年5月8日

「入れ墨に関する調査」を実施した
市側姿勢に抗議する!

 本日、大阪労働者弁護団から下記の通り声明が出された。

 記名式で全職員に回答を求める今回調査は、総じて、人権侵害にあたるものであり、直ちに中止するよう求めている。

 事の発端となった不適切な事象については決して許せるものではなく、再発させないように大阪市として対処すべきだが、声明にもあるように、今回調査は法的にも問題があることは明らかであり、他の対処方法があったにもかかわらず、人権侵害にあたるような調査手法を敢えて選択していると認識せざるを得ない。

 加えて、市長名の各職員向け文章を添付し、業務命令として回答を求める手法自体も、二月に実施された職員アンケート調査を彷彿とさせるものである。

 インパクトのある話題を振り撒き、マスコミを巧みに利用して世間の注目を集めることを幾度となく繰り返すやり方には辟易するばかりか、嫌悪感すら覚える。

 市当局は、市長の考えや発言ばかりに目を向け、使用者であるにもかかわらず、職員の立場など考慮するに当たらないと言いたげな対応を行っている。このような手法を繰り返す市側姿勢は極めて問題があり、改めて抗議の意思を明らかにする。

大阪市労働組合連合会

2012年5月8日
大阪労働者弁護団

大阪市による全職員対象
「入れ墨に関する調査」の中止を求める声明

 大阪市が本年3月21日付けで設置した「大阪市服務規律刷新プロジェクトチーム」は、大阪市職員の服務規律の厳格化の一環として、全職員に対し、記名式による「入れ墨に関する調査」を実施している。

 この「入れ墨に関する調査」は、5月1日から同月10日までを調査期間とし、全職員に調査票を配布して、作成日及び氏名の自署を求めるものである。

 調査票別紙1- 1は、人の胴体及び大腿部に斜線を引いた前面図と後面図を掲載し、「斜線部以外」すなわち肩から指先まで、首から上、膝から足の指先までを調査部位と指定して、「1 現在、あなたは入れ墨やタトゥー(右図の斜線部及びアートメイクを除く)をしていますか。」「2  入れ墨やタトゥーをしている部位はどこですか。(右図に○印で場所を記入のこと。)」「3 入れ墨やタトゥーの大きさはどのくらいですか。」の設問を置いている。

 また、調査票別紙1-2は任意調査として、別紙1-1で調査部位としなかった部分にかかる入れ墨やタトゥーについて、その部位、大きさ、及び施した時期を回答させるものである。

 大阪市長が職員宛に発した文書によれば、この調査の目的は「勤務中に入れ墨が市民の方の目に触れることになれば、市民の方が不安感や威圧感を持ち、ひいては本市の信用を失墜させる」ので、「実態を把握した上で、人事配置上の配慮、を行う必要がある」というものである。

 確かに本件は、大阪市職員がその勤務する児童福祉施設で、児童に対して入れ墨を見せたという事実を前提としており、当該市職員の行為が判断能力の未発達な児童に対するものとして不適切であったのは言うまでもない。

 しかし、今回の大阪市による全職員を対象とする記名式の「入れ墨に関する調査」は、以下の点から人権侵害に当たるので、直ちに中止するべきである。

(1)人が身体に入れ墨やタトゥー(以下「入れ墨等」という)を施すことは、個人の表現の自由であり、幸福追求権、人格権の一発露であり、プライバシーである。入れ墨等を施し、これを他人に見せるか見せないか、知らせるか知らせないかは全く個人の自由であって、何人からもその存在を意に反して表明することを強制されるべきものではない。

(2 ) 地方公務員法上、職員が入れ墨等を施すことは何らの義務違反も構成しない。入れ墨等を施していること自体、地方公務員法16条の欠格条項にいう「日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者」の一員であることを示す徴表ともならないからである。したがって、地方公務員としてプライパシー権を制約されるべき法的根拠はない。

(3 ) 入れ墨等はその消去が必ずしも簡単ではなく、入れ墨等の存在を隠したいとの思いの者もいる。一方、入れ墨等に対する社会的な偏見は、暴力団対策の強化政策とともに強まる傾向にある。本件「入れ墨に関する調査」は、この社会的な偏見をなくすどころかいたずらに助長するものである。

(4 ) 仮に大阪市の公務遂行において、例えば福祉現場など、対象市民が弱い立場にあって市職員の入れ墨等に対して畏怖心を抱く恐れがあるという場合にあっても、入れ墨等の調査は全職員に記名式で回答を求める必要はなく、各職場の上司が個別に職員に確認し指導する等の方法によれば足りる。

(5 ) 調査票別紙1-1の対象となる部位にある入れ墨等に関しては、外部から認識できるのであるから、全員を対象とする調査の必要はない。調査票別紙1-2の対象となる部位にある入れ墨等に関しては、外部から認識できないのであるから、そもそも調査をする必要はない。

 大阪市においては、今年2月、「職員アンケート調査」と称して、明らかに憲法に抵触する調査がなされようとし、大きな社会的非難を受けたところである。

 ところが大阪市においては、その後も不当な労働組合攻撃が様々な形で繰り返されている。大阪市におけるこのような異常事態は、繰り返されてはならないし、直ちに正さなければならない。にもかかわらず、敢えてまたもや今回のような非常識な行為がなされることについては、「全職員に対するアンケート調査」という手法による何らかの不当な意図、目的があると見ざるを得ない。あたかも、大阪市職員のレベルが低く、違法がまかり通っているかのような印象を社会的に植え付け、一方で、職員全体に対し、萎縮効果を狙い、官僚的統制を図ろうとするものといわざるを得ない。

 このような行為を地方自治体において権力的に行うことは、民主主義社会においては断じて許されるべきではない。

 以上により、本件「入れ墨に関する調査」は、直ちに中止するべきである。

 

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