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2012年9月25日

2012年大阪市人事委員会報告・勧告

【市人事委員会】
公民較差▲1.72%(7,236円)
一時金改定なし
【市労連】
減額措置の中止勧告を行わないどころか一切触れられていないことは極めて不満
地域手当の支給率引き下げは到底認められない

 大阪市人事委員会は9月25日、市長及び市会議長に対して、2012年の「職員の給与に関する報告及び勧告」を行った。

 同日、市労連に対しても、「報告・勧告」について説明があった。

 市労連は市人事委員会からの説明に対し、勧告制度の外で実施されている「減額措置」について中止勧告を行わないどころか、一切触れられていない内容であり、人事委員会の姿勢について「極めて不満」であることを表明するとともに、給与制度に関する課題について、人事委員会としての機能を十二分に果たし、積極的かつ適切に方向性を示すよう求めた。

 さらに、賃金センサスに初めて言及したことについても、これまでの調査・研究内容を踏まえた明確な対処方針を示すよう求めた。

 その上で、賃金・労働条件はあくまでも労使の主体的な交渉による合意が基本との立場を踏まえ、本年の較差にかかわって市側と交渉を行うことを表明した。

人事委員会委員長  これまで検討してまいった結果、とりまとめることができた「職員の給与に関する報告及び勧告」を、本日、市長及び議長に対して行ったところである。

 「報告・勧告」の内容については、局長から説明申し上げる。

行政委員会事務局長 まず、本年の民間給与実態調査では、比較対象事業所規模を50人以上として調査を行ったところ、ベースアップを実施した事業所の割合や定期昇給の昇給額が増額となっている事業所の割合が減少するなど、全国以上に厳しい状況が見られたところである。

 本年の給与改定についてであるが、月例給については、職員と民間従業員の本年4月分支給額を調査し、責任の度合、学歴、年齢別に対応させ、ラスパイレス方式により比較を行った。職員給与については、本年4月より給料及び管理職手当の減額措置が実施されており、この給与減額措置がないものとした場合の行政職給料表適用者の平均給与月額は425,686円であり、給与減額措置実施後の行政職給料表適用者の平均給与月額は399,086円となる。一方、民間給与は414,509円となり、その差は、給与減額措置がないものとした場合には▲11,177円、率にすると▲2.63%となり、給与減額措置実施後は15,423円、率にすると3.86%となる。

 ただし、本年8月に行われた給与制度の改正により、職員給与は引き下げられており、本委員会の試算によると8月時点の給与減額措置がないものとした場合の行政職給料表適用者の平均給与月額は421,745円となり、給与減額措置実施後では397,059円となる。

 職員と民間の給与を均衡させるためには、本来支払われるべき職員給与である、給与減額措置がないものとした場合の職員給与との較差に基づき、月例給の改定を行うことが適当であると判断するところであるが、本年については、4月時点の較差相当分である11,177円のうち、3,941円は8月に既に引き下げられていることになる。そのため、本年引き下げ改定すべき月例給の額は、7,236円となる。

 また、特別給については、民間の支給割合は3.95月分となっており、本市職員の期末・勤勉手当の支給月数3.95月分と均衡している。

 月例給の引き下げ改定については、給料表の引き下げを行うことも考えられるが、8月に給料表が大幅に改正され、改正について経過措置が設けられていることを考慮すると給料表を更に改正することは困難であり、また、扶養手当等の特定の手当の受給者だけで公民較差の解消を行うことは適当ではないため、本年については、当面地域手当の支給割合を2%引き下げることが適当である旨言及している。なお、医療職給料表(1)適用者については、医師の処遇確保の観点から改定の必要のない旨を言及した。

 改定の実施時期等については、改正条例の公布日の属する月の翌月から実施することとした。なお、平成24年4月からの年間公民給与を均衡させるため、医療職給料表(1)適用の職員及び給与減額措置が実施されている職員を除き、本年8月に給与制度の改正が実施されていることを勘案しつつ、平成24年12月期の期末手当において、所要の調整措置を講じる必要がある旨を言及した。

 勧告に基づく職員給与の試算については、今回の勧告が実施された場合、行政職の平均年収は114,893円の減少となり、その場合の行政職全体の影響額は約13億7千万円のマイナスとなる。

 次に、意見として、民間給与の把握のための賃金構造基本統計調査、いわゆる賃金センサスの活用について言及している。

 まず、賃金センサスと民間給与実態調査との相違点として、賃金センサスでは最新の調査データが月例給では1年前、賞与等の特別給では2年前のデータとなってしまうという調査データのタイムラグの問題や、月例給から実費弁償的な要素の強い通勤手当額を分離できないこと、次長や課長代理といった中間的な役職段階を把握できないことなどの課題について言及している。

 賃金センサスの結果の活用方法として、賃金センサスを民間給与実態調査の代替とすることは、先に述べた課題の解消なくしては適当ではなく、現時点では、月例給について、民間給与の傾向を賃金センサスの結果から把握するという方法を検討したところ、大阪市内の民間事業所では、年齢階層の上昇に伴い所定内給与も増加するものの、50歳台前半層をピークに50歳台後半層から低減するという傾向がみられたことなどを言及している。

 その他の意見では、給与制度等に関する課題として、本年8月の給与制度の改正に伴い、給料表の最高号給に到達した多数の職員については、その業績が昇給に反映されなくなることから、これらの職員の執務意欲の維持・向上を図るための方策を検討する必要性について言及している。他にも、本年、人事院が勧告した55歳以上の職員の昇給・昇格制度の見直しについて、本市における人事運用の実態を踏まえながら検証・検討していく必要性や、賃貸に係るもの等、住居手当全般について研究・検討を進めることについて言及している。また、賃金センサスの活用方法については、緒についたばかりであり、引き続き、大阪府人事委員会等と共同して研究・検討を進めていくことを言及している。

 次に、高齢期における職員の活用として、公的年金の支給開始年齢の引き上げに伴う雇用と年金の接続が課題となっているが、本市における高齢期職員の雇用確保策としては、民間や国における状況を考慮すると、再任用制度の活用によることが適当であることや、再任用に関する課題として、再任用の要件、再任用の形態及び再任用者が担う職務、職員の意向の確保、再任用職員の給与の在り方などについて、検討を進める必要があることなどを言及している。

 その他、時代の変化に即応した活力ある組織づくりの観点から、継続的組織運営に必要な多様かつ有為な人材確保として、本年行った採用試験の見直しの結果検証や、新規学卒者と社会人経験者採用者の採用比率の検討が必要であることなどについて言及している。

 能力・実績に基づく適正な人事評価とその結果の活用として、平成25年度からの相対評価による人事評価制度の本格実施に向けて、制度を整備しつつ、人事評価を人材育成に資するものとして、積極的に活用していくことが重要であることや、より職員の執務意欲の向上に資するよう、給与面、任用面ともに評価結果の反映方法について、検証・検討を進めていく必要があることなどについて言及している。

 自律的な人材の育成として、管理職員が能力、適性に応じて部下職員を指導、育成していく役割を適切に果たすことが重要であることや、女性職員の管理職登用を積極的に行っていくことの必要性などについて言及している。

 また、誰もが働きやすい職場環境づくりの観点から、適切な勤務時間管理と超過勤務の縮減として、職員の執務意欲を高め、公務能率を向上させるため重要であることを再認識し取組みを進めることや、取組みの成果を上げるため、超過勤務の発生要因の分析に加え、管理職員がその役割を適切に発揮することが重要であることなどについて言及している。

 両立支援の推進として、男性職員の育児休業等の取得率が極めて低く、両立支援に係る制度内容の更なる周知とともに、職員の希望に沿って制度を利用できるような職場環境づくりに職場全体で取り組む必要があることなどについて言及している。

 メンタルヘルス対策の推進として、メンタルヘルス対策を組織マネジメントの問題としてとらえ、各所属がより主体的に対処していく姿勢を持つことの必要性や、昨年度から実施されているストレス調査の結果も踏まえ、引き続き各職場において職場改善の取組みを進めていくことが求められることなどについて言及している。

 以上が本年の給与報告・勧告の概要である。

組合 貴人事委員会におかれては、平素より私たちの賃金諸条件等の維持・改善にご尽力いただいていることに敬意を表しておきたい。

 さて、ただ今説明された本年の「職員の給与に関する報告及び勧告」の内容について、何点かに絞り市労連の考え方を申し上げたい。

 まず、公民の給与比較について、本市職員給与が民間給与を上回り、その解消の為に地域手当の支給割合を2%引き下げること、そして一時金は、民間の支給割合と均衡しており改定しない等と、勧告内容の説明があった。とりわけ月例給について、4月時点でマイナス2.63%、額にして11,177円の較差が、また8月時点の試算では、マイナス1.72%、額にして7,236円の較差が生じているとしながらも、一方で、特例減額措置後では、8月時点の試算で4.39%、額にして17,450円も民間給与を下回っていることも明らかにされた。

 この内容は、月例給のマイナス較差が国の較差を大きく上回る非常に厳しい内容であり、人事院と同様に調査を行ったとされているものの、国や他都市の較差との乖離が大きく、加えて、特例減額措置後との比較では民間実態に比して大幅に下回っている実態からも納得しがたく、私たちの切実な要求に応えたものとはなっていないと言わざるを得ない。

 前回も指摘したが、組合員の生活実態は極めて厳しく、公民較差解消が本来の役割であるにも関わらず、勧告制度の外で実施されている減額措置の中止勧告を行わないどころか、一切触れられていないなど、私たちの要求に切実に応えようとしない貴人事委員会の姿勢は、労働者基本権制約の代償機関である責務を果たしているとは言い難く、極めて不満である。

 とりわけ、民間給与との較差相当分を解消するため地域手当の支給率を2%引き下げるよう勧告したことについては、8月の給与制度改革によって経過措置が設けられていることをその根拠にしているが、人事院規則をもとに、大阪市が条例で定めた支給率を、較差解消を理由に減額する手法自体に問題があり、特例減額措置などが実施されている状況からも到底認められるものではない。

 給与制度等に関する課題について、労使合意なく8月から実施された給与制度改革によって、長年の交渉で積み重ねてきた人事・給与制度が大きく崩れる結果となったことにより、8月以降の状況は決して看過できない事態であることは言うまでもない。貴人事委員会から職員の勤務意欲の向上のみならず、昇給・昇格制度に関する問題点など言及されたが、人事委員会としての機能を十二分に果たし、積極的かつ適切な方向性を示されるよう求めておきたい。

 一方で、8月から持ち家に係る住居手当が廃止されたことに関しては、市当局が労使合意もなく強引に実施したことには一切触れずに、「任命権者において住居手当の在り方について検討された結果」であると、市当局の対応を肯定的に捉えた認識が明らかにされとことは決して容認できるものではない。民間実態からも廃止を言及してこなかったこの間の経過を踏まえた対処策を明示すべきであり、貴人事委員会の姿勢は極めて問題があることを指摘しておく。

 賃金センサスの活用に関しては、調査結果に基づく問題点などが言及されたが、われわれが指摘してきたように、賃金センサスを活用すること自体に相当問題があり、ラスパイレス比較するためのデータとしては不適当であることが、改めて浮き彫りになったと認識している。今後、大阪府人事委員会などと共同して研究・検討を進めると言及されたが、比較データとして活用できないことは明白であり、いたずらに時間を費やすことなく、これまでの調査・研究内容を踏まえた明確な対処方針を示すよう求めておく。

 本日の人事委員会報告及び勧告は、率直に申し上げて組合員の切実な要求に応えたものとは言えず、納得できるものではないことを重ねて表明せざるを得ない。また、勧告制度に抵触する事象への対応を見る限り、第三者機関としての役割を果たしているとは到底言い難い。

 いずれにしても、今後市労連として、市側に対し賃金改善を求め主体的な交渉を行うこととするが、貴人事委員会も、私たちの指摘内容を十分踏まえ、改めてその使命と職責を果たされるよう求めておく。

人事委員会委員長 ただいま、市労連の皆様の「報告・勧告」の内容に関する考え方について、お聞きしたところである。

 いずれにしても、本委員会としては、これまでと同様に、中立かつ公正な第三者機関として、法に定められた責務を誠実に果たしてまいりたいと考えている。

以 上

 

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